厚生労働省「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブリックコメント
一般社団法人SRHR pharmacy PROjectは、すべての女性が緊急避妊薬にアクセスでき、かつ安全に使用できるよう、現場で女性を支援する団体として、以下の通りパブリックコメントを提出しました。
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早急な緊急避妊薬のOTC化を望む。
薬剤師がリーフレットやウェブサイトなどを活用して対応することで、OTCとしての販売は可能である。治療上、公衆衛生上の妥当な理由なく販売時に薬剤師の面前で服用を求めることや、合理的な理由なく服用後の婦人科受診を勧奨することは、国際的なガイドラインに沿わず、薬へのアクセスの妨げにつながりかねないため反対である。SRHRを尊重した運用となることを望む。
1.販売時の具体的対応案
安心安全に使用するための対応は、日本薬剤師会が作成した要指導医薬品・一般用医薬品の確認フローチャートに沿うことで可能である。
①児童への対応
薬の性質および用法の観点から、年齢制限を設ける合理的な理由はないため、年齢制限および本人確認は不要である。性的虐待や性暴力を受けて緊急避妊薬を必要とする児童の対応については、手引き等を作成して適切な初期対応ができるよう努めるべきである。
②リーフレットやウェブサイトの活用
女性は妊娠の可能性のあるセックスをしたかどうかを自分で判断できるため、緊急避妊を要するに至った経緯や月経状況に関する詳細な聞き取りは不要である。販売時の口頭での情報提供を必須とせず、リーフレットやウェブサイトなどを活用した情報提供を推奨したい。これにより、プライバシーに配慮した環境が十分に整っていない場所においても販売しやすくなる。購入者にとっても、自身が安心できる環境で、何度でも閲覧・視聴できるようになり、どこで購入しても均質な情報が得られる。後から何度も情報を見返せることは、さまざまな障害を抱えた人にとっても有益である。さらに、外国語や手話言語などの多言語への対応が可能となり、誰もがSafer sexに関する情報を得ることができる。
③性暴力被害者への対応
隠れた被害者も想定し、すべての購入者に情報提供を行うことができるよう、リーフレットの配布が望ましい。どの機関へ相談するか、相談しないことも含めて女性に選択する権利があり、ワンストップセンターへの紹介状を作成して相談を勧奨したり、販売者がその場で連絡するなどを、一律の対応として定めるべきではない。性暴力被害者への直接介入は専門機関が行うべきであり、販売者には求められない。
④具体的な確認事項および情報提供について
リーフレットおよびウェブサイトにより、すべての購入者およびパートナーへ情報提供が望ましい。
具体的に
・適応について
・避妊効果に関する説明
・副作用
・避妊法および性感染症の予防について
・相談先について
ポイント
・リーフレットの二次元バーコードなどからウェブサイト等へアクセスできる
・パートナーに向けた情報もある
・外国語や手話言語など多言語に対応したウェブサイト
・ウェブアクセシビリティの確保
2.薬剤師の研修体制
研修を必須化することで対応できる薬剤師が限定され、薬へのアクセスの妨げにつながりかねないため賛同しない。すべての薬剤師がいつでもeラーニングで習得できる環境を整えることが必要である。
具体的な内容
・SRHRの概念
・緊急避妊薬の作用機序
・我が国の緊急避妊薬使用の現状
・購入者の確認事項とその目的
・用法と副作用
・購入者からのよくある質問
・その他知っておきたい関連する医薬品
・避妊法
・性感染症
・我が国のにんしん相談の現状と公的支援
・DVおよび性暴力被害の現状と相談先
・二次被害防止とトラウマ・インフォームド・ケアの視点とは
3.悪用・濫用について
何度も緊急避妊薬を購入すること自体を濫用であるといった、誤った捉え方を前提に運用設計をしないでほしい。緊急避妊薬が容易に手に入ると性感染症が増えるというエビデンスはない。性暴力含むDVについて、暴力自体はコントロール手段のひとつに過ぎず、緊急避妊薬が容易に手に入ることが原因にはならない。リスクマネジメントの点で、要指導医薬品に留め置くことの合理的な理由は見いだせない。一方で、薬剤師が直接販売することで情報提供が確実に行われ、相談の機会にもなるため、第1類医薬品とするかはOTC化後の状況を評価し判断するべきである。
4.アクセス担保と地域連携
医師の処方による入手ルートがなくなるわけではないため、OTC化によって現状よりアクセスがよくなることは明白である。薬局に休日や深夜の対応まで求めるかどうかは、OTC化後の議論となる。
在庫の確認や、在庫がない場合の近隣薬局の案内、薬局ー病院間でも疑義照会など連携する体制は既に整っており、緊急避妊薬のスイッチOTC化に伴う体制作りは不要である。
5.性教育の取り組み
薬剤師が性教育や女性のヘルスケアに積極的に取り組み始めることを期待する。人権としての包括的性教育、SRHRの概念はじめ性と生殖に関する基礎知識が、薬学生・薬剤師がそれらを学ぶ場が必要である。
以上
上記についてより詳しく記載した完全版(PDF)もございます。「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブリックコメント
なお、1月26日「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト(緊急避妊薬を薬局でプロジェクト)」が厚生労働省へ要望書を提出する場に弊会メンバーも同席し、上記の完全版パブリックコメントを厚生労働副大臣に手渡しました。